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第一話です。


           第一話 ~背負った傷と代わり映えのない毎日~


「ちょっと、何してんのよ!?あんたたち!」
「お前には関係ねぇだろ!邪魔すんな、ガリ勉女!!」
「なんですって~~!!」
「相原、お前も女なんかに助けてもらうなんてまだまだだな!」
「クッ……。」
                 ・
                 ・
                 ・
                 ・
「……ゃん!お兄ちゃん!」
「ん……。」
「もぅ~朝だよ~。早くしないと遅刻しちゃうよ~!」
うっすらと目を開ける。視界には妹の菜々の顔がアップで映っていた。
時計に目をやると、時計の針は8時を指している。始業時間は8時40分だ。
「ハァ…今日も学校か。ダルいな~~。」
「も~、また、そんなこと言って~。そんなんじゃダメなんだから!」
「分かった、分かった。すぐ行くから待っててくれ。」
「それでこそ、菜々のお兄ちゃんだよ。」
菜々が部屋から出て行くのを確認して体を起こした。
額に手を当て、さっきの光景を思い出す。
「また、あの夢か……。」
さっきの光景は高校生になってからもずっと出てくる。
僕の心の傷……。何かがしたくても何も出来なかったあの頃。何とも目覚めの悪い朝だ。
「クソッ……。」
ベッドから抜け出し、着替えと朝食を早々に済ませて僕は妹の菜々と一緒に学校に行く。
「行ってきま~す!」
「行ってきます。」
今日も何の変哲もない、代わり映えのない一日が始まる。


「光一~!菜々ちゃ~ん!」
「あ、摩央姉ちゃん!おはよう~摩央姉ちゃん!」
「はい、おはよう。菜々ちゃん。おはよう、光一。」
「ああ、おはよう……。」

この人は僕の幼なじみの摩央姉ちゃん。僕より一つ年上で今は大学生であり、彼氏もいる。
僕の幼なじみであり、僕の心の傷の一端を担った存在であり、僕が好きだった人……。


女の子に対して積極的になろうとした、あの二学期と学園祭の日から早半年以上が経った。今は桜の花びらもすっかり散り、道路一面が桜色一色になった4月の中旬。
僕は高校3年生になっていた。
僕は二学期に摩央姉ちゃんと再会し、あの学園祭の日、告白した。
ずっと一緒に育ってきた存在、気付かない内にどんどん魅力的になり、それに気付いたとき僕は摩央姉ちゃんに恋をした。
それに気付いたのは中2の頃。『あの事件』をきっかけに……。
しかし、現実はそう甘くはなかった。摩央姉ちゃんからの返事は
「ゴメン、あなたを一人の男の子としては見れない。あなたはどこまでいっても弟の様な存在なの。」だった。
それから、追い打ちをかける様にこの話は広がり、僕は陰口というかバッシングにあった。モチロン、男女問わずに。
「アイツだろ?3年の水澤先輩に告白した奴って。」
「ああ、いくら幼なじみだからって無謀なことするよな。それにあんなどこにでもいそうな奴なんか、あの水澤先輩と釣り合うワケねーじゃん。」
「だよな、ハハハハハ!」とか
「ねぇねぇ、聞いた?あの人が水澤先輩に告った人らしいよ。」
「えぇ~!?あの人って女の子と話したとこ見たことないよ?あんな大した魅力もない奴に告られる水澤先輩が可哀想だよ~。」
と言った感じの会話が容赦なく僕の耳に突き刺さってきた。あまりにぶしつけな発言にこっちから食って掛かってやったこともあった。
親友の柊からは
「人のウワサも七十五日。気にすることないさ。それに、君があの水澤先輩の幼なじみで、かつ告白したことにみんなひがんでるんだよ。直に収まるさ。」と言われた。
とはいえ、告白した相手が相手なだけにかなり長いこと叩かれることになった。その間の僕といえば耐えるか、立ち向かうかのどちらかだった。
『あの事件』以来、僕は他人からの批判にはかなり強くなっていた。
そう簡単に打ち負けない精神力と相手の言動を冷静に分析し、矛盾を突ける力を手に入れてた僕には学園祭の事件は大したダメージにはならなかった。
基本的に誰かと争うのは好きじゃない。でも、向かってくる相手とは戦るしかない。でも、だからと言って相手と同じ手口ではやり合いたくない。
だから、どちらの事件でもこの二つの力で相手の人格を傷つけることなく、多数の相手を倒してきた。例えて言うと相手の武器だけを破壊するという武装解除だ。
僕の場合、相手の『誰かを傷つけようとする気持ち』だけを壊してきた。

『あの事件』では僕は傷つきながらも色んな事を学んだ。
特に何というか、『人の醜い部分』を垣間見た気がする。
当時の中学の雰囲気としては『相原をバカにすることが常識でそれをやらない奴は相原と同類』だった。僕をバカにしないと自分が爪弾きを喰らうという恐怖心からその雰囲気に飲まれた奴はたくさんいた。
そして相手の数は増えていき、最終的には学年の大半を相手にすることになった。
そうした雰囲気の中で僕は『人は最終的には自分勝手な生き物』という人間の醜い本能を見た。
モチロン、その当時の僕の強さでは勝てる数ではなかった。正直、今でも無理だと思う。
そしていつの間にか僕の目的は、勝つことより生き残ることに変わっていった。
そういうワケで孤立無援ながらも卒業まで一歩も引かず戦い続けた僕は、桁外れのしぶとさを持ち、当時を知る中学の人間にはちょっとした黒歴史的な存在になっている。
僕自身もそんな自分の強さに誇りを持っている。
しかし、その力を得た反面、後遺症とも言えるかなり傷の深いトラウマが残った。
『あの事件』以来、僕は友達以外の人間とは距離をとるようになった。特に女の子とは……。
何というか、女の子特有の冷たさに警戒心、恐怖心を抱くようになったからだ。
なので、去年の学園祭での事は僕にとってはかなりの冒険とも言えた。
話に戻るが、柊といえば、みんなの前では上手く誤魔化して裏では、僕にフォローを入れてくれていた。あの男に感謝して止まない日々だった。
幸運にも、僕の通う輝日南高校には同じ中学の人間はいない。
なので、地元の高校でありながら過去の事はバレずに済んでいる。
現在の僕はトラウマと去年の学園祭の事件せいで、さらに友達以外とはあまり口をきかない無愛想なヤツで通っている。
学校生活の方も何の楽しみも見出せず、午後の選択授業も最低単位だけ取って図書室で勉強している。
ウワサの方は静かになったものの、摩央姉ちゃんの件で学年中の有名人になったせいで未だに狙われることもあるため、出来るだけスキを見せないようにしている。

                 ・
                 ・
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                 ・
「……いち!光一!」
「へっ?あ、何?」
「なに、一人で真剣な顔してんのよ!」
「え、あ、いや……摩央姉ちゃんには関係ないだろ。」
「んもぅ!また、あの事かんがえてたでしょ?いいかげん忘れなさいよね。私はもう気にしてないんだから。摩央チェックその87!『男は過去の事でいつまでもクヨクヨしない』!何度も言ったでしょ?」
「……分かってるよ。」
摩央チェック……。
僕が摩央姉ちゃんに高校で再会した時からずっと続いている。
摩央姉ちゃんなりに気遣って使ったのだろうが、今の僕にはその言葉すら痛い……。
「そうだよ、お兄ちゃん、去年の学園祭から特に変だよ。前よりももっとみんなと距離置くようになったし、昔より、笑わなくなったし……。」
「二人には関係ないだろ!放っといてくれよ!」
「ゴメンなさい…」
「じゃあ、私こっちだから……。」
気がつくといつの間にか駅前に着いていた。僕らは摩央姉ちゃんと別れて学校に向かった。


学校に着いた僕はまっすぐ教室に向かう。席は窓側の一番後ろ。

今日も何の変哲もない、代わり映えのない一日が始まる。

そんな退屈な毎日が繰り返されるのにいい加減飽き飽きしている。
そんな事を考えていると柊が声をかけてきた。
「やぁ、おはよう。相原。」
「ああ、柊か。おはよう。」
「今日の放課後はどうするつもりだい?」
「そうだなぁ…また今日も図書室で勉強するか。」
「君ならそう言うと思ったよ。じゃあ、一緒にやろうぜ。」
「ああ、もちろん。」

学園祭からの半年、学校に楽しみを見出せなくなった僕は猛勉強した。柊と、とある人物のお陰で……。

二見瑛理子
輝日南高校が誇る、IQ190以上の頭脳を持つ天才少女。そして、菜々や摩央姉ちゃん以外の女の子では唯一心を許せる存在。
彼女に勉強を教えてくれと頼んだ時の彼女の返事はこうだった。
「あなたが勉強?フフッ、一体どういう風の吹き回し?まぁ、いいわ。暇つぶし程度にはなるわ。あなたには実験に付き合ってもらってるし。」
実験というのは彼女の趣味で、『付き合ってもらっている』と言っても、どれもこれも普通の人の神経ではやらない代物ばかりだった。何をやらされたかは、恐ろしくて口が裂けても言えない……。
頼んではみたものの、最初はどんな恐ろしい手法が待っているか怯えていたが、案外普通で僕でも分かりやすく教えてくれた。
柊とは勉強会という形で平日は暇さえあれば、図書室で勉強していた。
その甲斐あって、今では柊とも互角の成績を取れるようになった。
因みに柊は私立文系志望で僕は私立理系志望である。
授業中は受験科目に関係のない授業は毎日、内職か昼寝。とはいえ、内申書には関わるのでテスト前はキッチリ勉強している。
お陰で現国の川田先生からは
「まったく、あれだけ授業中に寝ててよくこれだけの点が取れるわね。」と嫌味を軽く言われるがそんなことはお構いなし。
一人の高校生としてはイマイチだが、受験生としては充実した毎日だった。
でも、今日の図書室はそんな僕の何の変哲もない、代わり映えのない毎日を突き崩す出来事があるとはその時の僕は予想だにしなかった。

その出来事がこれから始まる、忘れられない1年間となる、ほんの小さな始まりとなることを知らずに……。


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