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第二話です。


             第二話 ~運命の出会い、そして始まり~


いつもの様に授業を受け、放課後になった。
僕と柊は朝の約束通り図書室に向かう。
僕たちの通う輝日南高校は進学校ではないものの、真面目に授業さえ受ければ、予備校に通わなくても有名大学に合格できるレベルの授業をしてくれる。
僕は1、2年の不真面目さが響いて、私立の最高レベルの推薦は受けられそうにないが、その下のレベルなら受けられると担任に言われた。なので僕は入試と推薦、両方に対応できる様な勉強している。
柊の方は1年からずっと優秀なのだがアイツが希望する大学の学部には推薦枠がなく、入試で受ける予定だ。
図書館に着くと早速、柊が話題を切り出してきた。
「相原、今日は君は何を勉強するつもりだい?」
「今日はとりあえず、数学だな。明日は授業で小テストがあるし、一番伸ばしたい教科だからな。」
「そうか。じゃあ、俺は向こうで古文を勉強してるよ。何かあったら呼んでくれ。」
「ああ、またあとでな。」
そう言って柊は図書室の奥に消えていった。僕は外の景色が見える窓側の席に陣取った。
時刻は4時半。図書室は8時まで開いている。
軽く気合いを入れた僕は勉強に取り掛かった。

しばらくして一人の女の子がやってきた。
その女の子は僕が座っているテーブルの前のテーブルに座り、ちょうど2つテーブルを挟んで向き合う感じになった。
僕も最初は「女の子」ということもありチラ見した程度だった。
それから1時間程が経ち、数学がキリのいい所で終わったので休憩することにした。
反射的に伸びをする僕。伸びを終え、視線を前方にやる。
さっきの女の子が黙々と勉強していた。僕も女の子と目が合わなければトラウマに駆られることもないので、何となくボッーとその子を眺めていた。
(この時間までいて、勉強してるってことは3年生だよな?でも、こんな子見たことないぞ?)
とそんな事を一人考えていると女の子が顔を上げた。当然、目が合う。
「しまった!」と身構えようとした瞬間、いつもの、あの戦慄した感覚に襲われることはなかった。
(…あれ?)
自分の感覚が信じられず頭に疑問符が浮かんで仕方がなかった。
そんな事を考えている僕になおも注がれる女の子の視線に気付き、気まずくなって目線を外の景色にやる。
(何だ、今の感覚?何で怯えなかったんだ?)
一人の人間としてか、理系人間ならではの探究心が僕を煽った。
もう一度、女の子に視線をやる。女の子もそれに気付き、また目が合う。
その瞬間、その理由が直感的に分かった。
この女の子の目には僕が怯えるような光がない。むしろ、綺麗で暖かいものを感じた。
僕としてはホッとしたような、不思議な、奇妙な感覚だった。
女の子はまた勉強に取りかかる。
そしてこの時、僕の中で彼女と話してみたいという気持ちが芽生えた。
僕はいつの間にか勉強そっちのけで、その子に話しかけるきっかけを捜していた。
するとある事に気付いた。その子の顔のちょうど目の下に顔の窪みなのか、クマなのか、どちらとも取れるものを見つけた。
これだと思い、次に目があった瞬間、
「目、すごいクマだね。大丈夫?」と聞いた。
長い間、親しい女の子と以外喋ってなかった僕にしては落ち着いて聞けた。
突然声をかけたので驚くかなと思っていたけど、女の子は案外普通で、かつ笑顔で
「あ、いいえ、これはクマではなく目の窪みですよ」と答えてくれた。
「そっか。さっき目があった時に気がついてね。それで、何となく気になってね。昨日、何時に寝たの?」
「昨夜は1時半くらいですね。」
「そっか~。結構遅いんだね。」
「はい、色々やる事が多くて……。いつもそれぐらいなんですよ。」
話を続けようとした瞬間、図書室の先生に睨まれ、苦笑いをしながら彼女の座っているテーブルに移動し、テーブルを挟んで向き合う形に座った。
近くに寄って見てみるとなかなか整った顔でかわいい。ショートボブで上品な感じの女の子だ。
女の子が口を開く。
「ところで、あなたはどなたですか?」
「あ、ごめん。自己紹介もなく、声かけて。僕は3-Aの相原光一。君は?」
「私は3-Bの祇条深月(しじょうみつき)と申します。初めまして相原さん。」
「初めまして。祇条っていうと、あのきびな池のほとりにあるあのお屋敷の?」
「はい、ご存知なんですね。」
「ハハ、まぁ、ここら辺ではちょっとした有名人だからね。直に顔を見たのは初めてなんだけど。」
「そうなんですか?それもなかなか珍しいですね。そうですか……自分では意識したことないんですよね。やっぱり、あれだけ大きいと目立ちますよね。ところで、相原さんはここで何を?」
「ん?ああ、まぁ、見ての通り勉強だよ。いつもここで勉強してるんだ。祇条さんも?」
「はい。でも、今日はたまたまですね。いつもはまっすぐ家に帰って勉強するんですが、たまには気分を変えて図書室で。」
そう言った祇条さんは、ニコッと笑った。僕は思わず、ドキッとしてしまった。
(ヤバい、かわいい……。)
祇条さんは続ける。
「相原さんは文系なんですか?それとも理系?」
「え?ああ、僕は理系だよ。私立のね。祇条さんは?」
「私は国立の文系なんです。学部は英文科なんです。相原さんは?」
「僕は農学系の学部だよ。大学院まで行って、企業で研究職に就きたいんだ。」
理系に進んだのは間違いなく二見さんの影響である。
彼女の実験はとんでもなく危険なものが多かったが、そのスリルが面白かった部分は否定できない。
「祇条さんは何で英文科に?」
「私、英国が好きでそれでよく向こうの作品を読むんですよ。それで、そのうち原書で読めるようになったら良いなって思って……。」
「そっか。いいんじゃない?英文学を原書で読めるようになるなんてすごいことだと思うよ。じゃあ、センターで理科は何を使うの?」
「生物です。一番楽ですし、面白いですから。」
「あ、同感。僕も生物使うんだけど、仕組みが分かったりすると面白いよね。」
「はい。相原さんとは気が合いそうですね。」
「そう?そう言ってくれると嬉しいな……。」
「フフッ。」
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そんな感じで喋っていると祇条さんがふと腕時計を見て、荷物をまとめ始めた。
「ごめんなさい、相原さん。私、そろそろ時間が……。」
「ああ、別にいいよ。女の子だし、あんまり遅くなると家の人が心配するしね。」
「本当にごめんなさい。では……。」
「うん、またね、祇条さん。」

彼女の後ろ姿を見送って一人になった僕は何とも言いがたい嬉しさに包まれていた。
久しぶりに菜々や摩央姉ちゃん、二見さん以外の女の子と話せた。
二見さんと友達になった時とは違う感覚……。二見さんとの出会いは今でも鮮明に覚えている。
彼女との出会いはあの学園祭の後である。
摩央姉ちゃんの一件でバカにされて、やさぐれていた僕は、一人になるために放課後の屋上に行った時に二見さんが紙飛行機を飛ばしていたところに出くわしたことから始まる。
その時話した時に、彼女のまとう雰囲気に妙な親近感が湧いた。
彼女のことが気になった僕は柊からよく理科準備室にいるという話を聞き、会いに行った。
すると、彼女が実験で慌ただしくしている場面に出くわし、強制的に手伝わされた。
「あ、相原。ちょうどいいわ、そこの薬品とって!」
「ええっ?いきなり何?」
「いいから早く!今、大事なところなの!早くしないと爆発するわよ!」
「うえぇえええ!?」
……とこんな感じで彼女の実験に付き合いだしたのである。
その時は命の危険が賭かってて話すどころではなかった。
それから後日、改めて彼女に会いに行き話した。
それ以来、彼女にちょくちょく会いに行き、話すようになった。
最初はあまり気にかけてくれず、他者を寄せ付けない冷たさがあったが、徐々に色んな実験や話を通して、彼女の色んな面が出てきて親しみやすい存在になっていった。
二見さん自身も僕のウワサや過去を聞き、親近感が湧いたのか、次第に心を開いてくれた。
今では友達兼先生である。
また、僕の中の彼女のイメージだけでなく、彼女自身も変わっていった。
出会った頃は人と関わることを嫌っていたが、僕や柊と友達になってからは人間関係の楽しみを見出し始め、今では僕たち二人以外の友達もできるだけでなく、僕以上に人間関係が上手になった程だ。

そんな事を考えていると柊が声をかけてきた。
「おーい、相原。キリもいいみたいだし、そろそろ帰らないか?」
「えっ?あ、ああ。そうだな……。」
どちらにしろ、今日は勉強どころではない。そんな状態を見て取ったのか柊は口を開く。
「どうしたんだ、相原?何だか嬉しそうだな?君のそんな顔を見るのはずいぶん久しぶりだが?」
「えっ、あ、いや、な、何でもないよ。」
「そうか?その割にはずいぶん顔がニヤけてるし、慌てているようだが?」
「だから、何でもないって!ちょっとボッーとしてる時に声をかけられたから、ビックリしただけだって。」
「ふーん…ま、いいさ。それじゃ、帰ろうぜ。」
「ああ……。」
その時は柊にでもさっきの事は言いたくなかった。
久しぶりに初対面の女の子と喋ってドキドキしただなんて……。

僕はそんな気持ちを胸に抱えながら柊と一緒に家路に着いた。

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