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第三話です


          第三話 ~変わり始めた僕と毎日、そして奇妙な感覚~


家に着くと菜々が待ち受けていた。
「お帰り~お兄ちゃん。」
「ああ、ただいま。」
「ご飯、まだでしょ?一緒に食べよ!」
「ああ、そうだな。」
着替えを済ませて、僕は菜々と一緒にご飯を食べ始めた。
「ねぇ、お兄ちゃん、聞いて、聞いて~。今日、なるちゃんがね~」
食事中の話題は大概、菜々の1日の出来事である。内容はほとんどが友達の里仲なるみちゃんとの事だ。
(なるみちゃんか……懐かしいな……。そういや、僕が2年の頃は、なるみちゃんが僕のことをカッコいいとか言ってたっけ?)
「ちょっと、お兄ちゃん!菜々の話聞いてる?」
「ああ、悪い。何だっけ?」
「もぅ~、ボッーとしちゃって。何かあったの?」
(マズい。菜々にまで何かあったってバレてる。僕って周りから見て感情が言動に出やすいみたいだからなぁ。)
「な、何でもないよ。ちょっと疲れてるだけだ。そうだ、最近なるみちゃんから僕の話って出てる?」
「ううん、あんまり。お兄ちゃん、朝も言ったようにみんなと前よりもっと距離取るようになったでしょ?だから、なるちゃん『先輩、私のこと嫌いになっちゃったのかなぁ~~?』って泣いてたよ。だから、最近はお兄ちゃんの話はあんまり振らないようにしてるの。もぅ、お兄ちゃん、女の子泣かしちゃいけないんだから!」
「分かった、分かった。別になるみちゃんのことは嫌いになんかなってないよ。お兄ちゃんだって色々あるんだからな。近い内に暇な日の昼休みに会ってやるからそれでいいだろ?」
「うん!なるちゃん、きっと喜ぶよ~!」

そんな感じで夕食をとった。


夕食の後、僕はリビングでTVを見ていた。番組は学園ドラマ。
内容は頭の悪すぎる27歳の青年が齢を10歳偽って高校生活を送るというドラマ。
はっきり言って、ありえない設定だが面白い。そして、今の僕とは正反対の生活だ。
「こんな風に学校生活を楽しめたらなぁ~」とつくづく思う。
僕の場合、はっきり言って今の生活は何の楽しみもない。
それどころか、レベルの低いヤツばっかでムカつくことの方が多い。
そんな生活から脱するためにも大学を必ず受かって楽しい生活にしたい。
僕がこのドラマで一番好きなのはエンディングの主題歌である。
歌っている歌手は主人公が所属しているバンドで主人公役の俳優がボーカルである。
歌は有名なシンガーソングライターの書き下ろしで、内容は『たとえ目の前の現実が厳しくても、自分の人生は自分で切り開いていけ』という感じの歌詞だ。もちろん、学校の登下校でもよく聞いている。
何というか、『あの事件』の頃やこの半年間の僕にとっては自分そのものと言った感じに思える。

ドラマも終わり、リビングを出て部屋に向かう。
とりあえず、床にゴロンと横になり、今日の図書室での出来事を思い出す。
(祇条さんか……。すごくかわいかったな……。あんな風にドキドキしたのって久しぶりだな……。あんな子と仲良くなれたらどんなに楽しいだろうか……。)
そんな事をボッーと考えていた僕を現実に引き戻すかの様に携帯の着メロが鳴る。
(誰だ、こんな時に?)
携帯を見ると柊からのメールだった。
内容は「生物の問題で分からない所があるから月曜に教えてほしい」という内容だった。「OK」の返事を出した後、また横になるのも面倒になった僕は机に向かい、あるノートを取り出した。
実はこれ、僕の日記。
学校に楽しみが見出せなくなった僕が2年の3月位から少しでも楽しくなれるようにした僕なりのちょっとした工夫であり、僕の自己分析と高校生活の記録……。
いつもは、「今日は柊と一緒に何をしたか」とか、「こんなムカつく事があった」とか程度だが、今日は違った。

4/14(金)記入日4/14日 PM10:33~10:57
今日もいつもの様に柊と一緒に図書室で勉強した。でも、今日はいつもと違う事もあった。
偶然的に僕の向かいのテーブルに座った女の子と話した。
普段なら、例のトラウマに怯えて話せないがその子はどういうワケか怯えることがなかった。その子の目はとても澄んでいて、僕が怯えるような光はなかった。
彼女の名前は祇条深月(しじょうみつき)という名前だった。あの有名な祇条家の娘だ。
顔を見るのは初めてだったが、とても取っ付きやすい感じの女の子だった。
彼女の笑顔が強烈に残っている。彼女にもう一度会いたいな……。

日記を書き終えた僕はまた、想像(妄想とも言えるが……)にふけり始めたが、明日の小テストのことを思い出し、勉強し始めた。


数日後
いつもの時間に起き、学校に行く僕。
いつもと変わらない風景だが、ここ数日はこの間のこともあり、ちょっと違う。
「あ、光一~!」
「あ、摩央姉ちゃん。おはよう。」
「おはよう。この間はごめんね。あんな事言って。」
「ううん。いいの、いいの。気にしないで。僕もムキになりすぎた。……ってどうしたの?摩央姉ちゃん?」
「あ…いや、あなたがそんなに明るい表情、久しぶりに見たから、ちょっとビックリしちゃって……。」
「僕、そんなに明るい顔してた?」
「うん。最近はいつも目つき悪いし、難しい顔してて、話しかけても『ああ』とか『うん』とか無愛想な返事しか返ってこなかったから……。何かいい事でもあった?」
(ヤバい、まただ。)
「そ、そんなことないよ!ただ、この間はマズかったなって思っただけだよ。も~変なこと言わないでよ、摩央姉ちゃん。」
「そう?それにしては明るかったけど……。まぁ、いいわ。じゃあね、光一。」
「うん、またね。摩央姉ちゃん。」
摩央姉ちゃんと別れ、一人になった僕は冷静になろうとしていた。
(マズいな、どうにも顔が緩んで仕方がないみたいだ。こんな時こそ気を引き締めなくては!)
そう思った僕は頬を2回、パン、パンと叩き、学校へ向かった。

学校に着くと柊が待ち構えていた。
「おはよう、相原。ちょっと英語の問題で分からない所があるんだ。さっそく頼むよ。」
「ああ、分かった。すぐ準備するから待っててくれ。」
「……ここの問題なんだが……。」
「ああ、ここの問題はここの文を指してて……。」
「ああ、なるほど!」
こんな感じの会話が朝の教室に響いた。


昼休み
僕は菜々に約束したようにテラスでなるみちゃんに会いに行った。
久しぶりに見たなるみちゃんは少しだけ大人っぽい顔つきになっていたが、相変わらず元気な女の子だった。
「相原せんぱ~~い!会いたかったです~~!」
「久しぶり、なるみちゃん。相変わらず元気だね~。」
「はい!菜々ちゃんから、先輩が会ってくれるって聞いた時は嬉しくて、嬉しくて……。」
「そんな大袈裟な。菜々から聞いたけど、僕がなるみちゃんを嫌いになったんじゃないかって心配してたらしいけど、僕は別になるみちゃんを嫌いになんかなってないよ。ただ、僕も受験生だしね、それに受験勉強以外にも色々あってね……。」
実際にそうだったし、人間関係に疲れた僕はなるみちゃんとも少し距離を置きたかった。
「そうなんですか?良かった~~。そうだ、先輩。久しぶりに私のうどん食べてください!」
なるみちゃんの家は商店街にある讃岐うどんの店『里なか』である。彼女はそこの店主、里仲軍平さん、通称、『軍平爺さん』の孫娘である。
「え?あ、ああ~……。」
正直、勉強もあるし断りたい。困りきって菜々の顔を見ると「行ってあげてよ!」という表情で睨まれた。
「……いいよ。久しぶりになるみちゃんのうどん食べたいな。」
「本当ですか?やった~!じゃあ放課後、家庭科室で。」
「うん、いいよ。」
なるみちゃんと別れた後、菜々が詰め寄ってきた。
「も~お兄ちゃん、今、絶対断ろうとしたでしょ?せっかく久しぶりに会ったのにそれじゃ意味ないでしょ!」
「う……スマン。でも僕だって色々あるし……。」
「お兄ちゃん!」
菜々に怒鳴られた。これ以上の抵抗は無理と判断した僕はしぶしぶ引き下がった。

放課後
昼休みに約束した通り家庭科室に向かう僕。中に入るといつもより気合いの入った表情のなるみちゃんと菜々がいた。
「なるみちゃん。」
「あ、先輩!来てくださったんですね!」
「そりゃ、約束したしね。その感じだといつもより美味しいうどんが食べられそうだなぁ。」
「はい!もうすぐできますから、そこで座って待っててください。」
「うん。そうさせてもらうよ。」
「お兄ちゃん、なるちゃん今日は大サービスでエビ天2本だって!」
「ほう、そりゃ楽しみだ。」
そして、数分後。出来上がったうどんを持ってくるなるみちゃん。
その表情は真剣そのものだ。さっそく、うどんを口に運ぶ。
「うん、前より美味しくなってるよ。なるみちゃん、腕を上げたね。」
「本当ですか~!やった~!菜々ちゃん、先輩が美味しいだって!」
「良かったね、なるちゃん!」
二人で手を取り合って喜んでいる。
特になるみちゃんはいつもの三割増しで目を輝かせて喜んでる。二人のこの屈託のない笑顔を見ると何だか微笑ましい気持ちになる。
うどんを食べ終えた僕は立ち上がり、入り口に向かう。
「じゃあ、なるみちゃん。僕、もう行くね。」
「はい、先輩。また来てくださいね!」
「うん、またね。」

家庭科室を出て一人になると何とも言えないため息が出た。正直、少し疲れた。
なるみちゃんが嫌いなワケじゃないけど、久しぶりにあんな事をしたからだと思う。
すると、ある疑問が僕の内で生まれた。
(そういえば、祇条さんの時には何で疲れなかったんだろう?)
そんな事を考えながら図書室に向かった。


図書室に着いた僕は、この間と同じ席に座った。
でも、さっきのなるみちゃんに会って疲れたのと、満腹感で眠くなっていた。
「このままでは勉強どころではない」、そう思い、30分程寝ることにした。
僕はテーブルに突っ伏して、目を閉じた。
                 ・
                 ・
                 ・
それからどれくらい経ったのだろうか、僕の肩を叩き、話かける声が聞こえた。
「……さん、相原さん。」
「ふぁ…?」
「よく眠ってらっしゃったみたいなので起こさなかったんですが、あまりに長かったので、失礼ながら、起こさせてもらいました。」
「あ、し、祇条さん!」
「ど、どうしてそんなに驚かれるんですか?」
「あ、ゴメン。何でもないよ。それより、僕、そんなに長く寝てた?」
「はい。私が来たときから30分くらい。」
時計を見ると時間は5時半を指していた。僕が寝たのは4時半過ぎ。完全に寝過ぎた。
「うわっ、ヤバい、寝過ぎた!5時には起きるつもりだったのに!」
「え、では、私が来た時に起こせば良かったですね。ごめんなさい……。」
「あ、いや、祇条さんを責めるつもりで言ったんじゃないよ。そんなに気にしないで。」
「そうですか?でも……。」
「いいから、いいから。まだ時間もあるし、これから勉強すればいいんだからさ。」
「そう言っていただけると助かります……。」
そうは言うものの、祇条さんはまだ気にしてるようだ。
これ以上、彼女を困らせるワケにはいかない。そう思った僕は努めて明るい感じに話した。
「さぁ~勉強するぞ~~!」
「クスっ、変な相原さん。」
「えっ?そうかな?ハハハ……。」

こうして僕は祇条さんと再会した。
あれっきりだと思ってた彼女と会えたのは素直に嬉しい。
彼女と会えた嬉しさから眠気もすっかり吹っ飛んだ。そのお陰か勉強の方もいつもよりはかどった。
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                 ・
そして図書室が閉館時間となり、僕たちは一緒に図書室を出た。
「今日は起こしてくれてありがとう。お陰で助かったよ。」
「そうですか?相原さんがそう言っていただけるのなら起こして良かったと思えます。」
「うん、本当にありがとう。」
「それでは、私、こっちなので……。」
「うん、またね、祇条さん。」
「はい、失礼します。」
祇条さんの後ろ姿を見送り、一人になった僕は思わずガッツポーズをとっていた。
「祇条さんとまた会えた」、そんな他愛もないことに喜んだのはずいぶん久しぶりだった。


家に帰った僕は家族に悟られないよう、出来るだけ平常心で話して夕飯と風呂を済ませた。
その後、部屋に戻った僕は勉強をした後、日記を開いた。

4/19(水)記入日 4/19 PM12:37~12:51
今日はまた良い事があった。放課後なんと、この間会った祇条さんに会った。
その前に久しぶりになるみちゃんに会ったのと慣れない事をしたので、疲れて図書室で勉強前に寝ていた。そこを起こされたのだ。
寝起きに会ったので最初はちょっと寝ボケていたが、彼女に会えた嬉しさでその眠気も吹っ飛んだ。
そういえば、ここ最近、祇条さんに会ってから学校生活が少し変わった。
なんて言うか、少し学校が楽しくなったっていうか、明るくなった様な気がする。
それに、気になる事も1つある。
今日、祇条さんと会った時、最初に会った時と同じようにトラウマに怯えることがなかった。
あの目の光の正体は多分、彼女の持ち得る何かだとは思うけど、あれは一体……?正直、すごく気になる。

日記を書き終えた僕はベッドに入り、今、日記に書いた祇条さんに会った時の奇妙な感覚について考えた。
この半年、僕は女の子に対して警戒していた。
でも、祇条さん会っている時はそれがなかった。自分でも信じられないというのが正直なところだ。
それが何なのかはっきりとは分からなかった。でも、それが決して嫌なモノではないことはその時の僕でも分かった。

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