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第四話、最新版です。今回はここまでにしときます。


           第四話 ~忘れかけてた感情、そして告白の時~  


翌週
いつもより早く目の覚めた僕はいつもより早く家を出た。
朝は家にいるより、学校にいた方がいい。
通学路を歩きながらお気に入りのあの曲を聞いている。頭の中は先日、日記に書いた奇妙な感覚について。
あれから数日がたった今でさえも答えが分からない。
心当たりがあると言えば『好き』という感情だけど、摩央姉ちゃんの時には感じなかった感覚……。これが『好き』という感情なら今までとの違いは何なんだろう。


学校に着いた僕はいつもの様に勉強を始めた。今日は1時間目に英語の単語テストがあるのでその勉強。
一通りチェックも終わり、一休みする。
まだ、クラスには誰も来てない。ちょっと早く来すぎたみたいだ。
(やれやれ、ちょっとそこら辺でも歩いてくるか……。)
そう思った僕は教室を出た。
他のクラスも覗いてみるが知ってる友達も特にいなく、何となく特別教室のある教室棟に向かった。
すると、どこからともなくピアノの音が聞こえてきた。
(誰だ?こんな朝早くから?先生ではないのは間違いないみたいだけど……。上手いのは当然として、なんて言うか、すごく綺麗な旋律だ……。)
音楽室に着いた僕はそっと音楽室のドアを開けた。
するとそこには、僕の疑問の張本人がいた。
「祇条さん……!」
「あ、相原さん。」
「どうしたの?こんな朝早くに?しかも、こんな所で。」
「気分転換です。時々、朝早く来てこうしてピアノを弾いてるんですよ。なんだか、とてもすがすがしい気持ちになれるんですよ。相原さんは?」
「ああ、今朝はなんか早く目が覚めちゃって。それで家にいるのも何だから、学校に来て勉強してたんだけど、それも終わったからプラプラ歩き回ってたんだよ。そしたら、ピアノの音が聞こえてきてね。」
「そうですか。そういう時ってありますよね。」
「うん。それより、ピアノすごい上手だね。」
「そ、そんなことないです。…でも、お褒めの言葉ありがとうございます。」
そう言った祇条さんは照れながら笑った。その表情に僕はまたドキッとなる。
そんな気持ちに僕は戸惑い、隠しながら話題を振る。
「そういえば、この間も図書室にいたよね。あれってまた、たまたま?」
「いいえ、この間来た時、家より勉強がはかどったのでこれからは図書室で勉強しようかと。」
「そっか。それじゃ、これからはちょくちょく会えるね。」
「クスッ、そうですね。」

そんな感じで祇条さんと朝の時間を過ごした。


キーンコーンカーンコーン

「あ、ヤバい!HRが始まる!」
「そうですね。早くしないと…!それでは、相原さん、失礼しますね。」
「うん、またね。祇条さん!」
そう言うと僕は慌てて走りだした。
祇条さんの教室は音楽室から近いからいいけど、僕はそうはいかない。
しかし、時既に遅し。
教室に着くと、入り口にクラスメートで風紀委員の栗生恵が仁王立ちして待っていた。
「あら、相原君、おはよう。荷物は机の上にあるのに、その持ち主がいないってどういうこと?」
「あ、栗生さん。ハハハ……まぁ、色々あってね。」
「色々も何もないでしょ!私の前で言い訳なんて良い度胸じゃない!」
「わ、悪かったと思うよ。でも、いいじゃないか。別に遅刻したワケじゃないんだしさ…。」
「言い訳なんて聞きたくないって言ってるのが分からないの!?そこまで言うのなら覚悟は出来てるんでしょうねぇ?」
栗生さんは冬服のセーラー服の袖をまくりながら近づいて来た。
栗生さんの家は柔道の道場で彼女は有段者である。投げられたらひとたまりもない。
その上、「今日は朝から祇条さんに会って気分が良いのにそれを害されてたまるか!」と思い、イラついた僕はいつもとは逆に栗生さんに向かっていった。
既に僕のブレザーの胸ぐらを掴んでいた彼女の腕を逆にガッとつかみ、彼女を睨みつけて怒鳴った。
「いい加減にしろよ!悪かったって言ってんだろ?大体、いつも栗生さんは横暴なんだよ!自分の言うこと聞かないとすぐ怒って投げるし、校則、校則って言って正義感を振りかざしてるつもりみたいだけど、かえって迷惑なんだよ!そんなのが本当の正義だと思うなよ!!!」
「な、何よ、急に……。そんなことないわよ!だったら、本当の正義感って何だって言うのよ!」
「そんな事は僕だって分からないよ!でも、確実に言えることは栗生さんの正義感は本物じゃない!」
栗生さんはあまりに予想外な反撃に返事に窮しているようだ。
「もういい?HRも始まってるし。」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい!相原君!まだ話は終わってないわよ!」
「だったら、今の僕の指摘に答えてみろよ!」
「う……。」
そう言うと僕は栗生さんを押しのけて教室に入った。
教室では僕が栗生さんに啖呵を切ったことに担任もクラスのみんなも驚いていた。
HRが終わると柊が寄ってきて話しかけてきた。
「どうしたんだ、相原?君があんなに怒るのは久しぶりに見るが?」
「いや、ちょっと良い事があってさ、『たかが、HRに遅刻したぐらいで気分を害されてたまるか!』って思っただけだよ。」
「そうか。それでその『良い事』ってのは何なんだ?」
「あ、いや、その、大した事じゃないんだ。本当に些細な事で言うのもバカバカしいって感じの事なんだ。」
「その割にはずいぶん感情的だったけどな。」
「ま、まぁ、何だっていいじゃないか!それより授業、授業!」

こうして何とか柊の追求をかわした。
因みに栗生さんは後で謝っといた。栗生さんは少しうなだれていたが「分かればいいのよ……。」と言っていた。
でも、多分、相当ヘコんでいたと思う。本当にゴメン、栗生さん……。


放課後
柊は用があると言って先に帰った。僕はいつもの様に図書室に向かう。
今日も祇条さんがいる可能性があると思うだけで足取りも軽い。
図書室に着くと祇条さんに最初に会ったあの席に座る。
ここの所、色々あって少し忙しかった。「こういう何でもない日こそ、集中してやらなくては……!」と思い、勉強に取り掛かった。
                 ・
                 ・
                 ・
今日の図書室は時間が経つにつれて図書室にいる人数が増えていく。
僕の席の周りは普段、あまり人が来ない方なのだが、徐々に席が埋まってきた。
そんなことを考えながら勉強していると前に人が立つ気配がし、声をかけてきた。
「あの……ここ、よろしいでしょうか?」
僕は相手の顔をよく見ずに答える。
「え?ああ、良いですよ。」
「クスッ、どうしたんですか?相原さん?そんな他人行儀に。」
「へっ?あ、祇条さん!ご、ごめん!よく見てなかったからさ。」
「そうなんですか?ごめんなさい、私が勉強中に声をかけたから……。」
「ああ、いや、別にいいよ。僕も生返事だったんだし。それより、座って、座って。」
「はい。」

こうして祇条さんが目の前に座る形で勉強を始めた。僕としては嬉しい様な、恥ずかしい様な感じだった。
しばらくして急に祇条さんが声を上げた。
「あ……。」
「ん?どうしたの?祇条さん。」
「消しゴムが……。さっきまではあったのに……。」
「そうなの?じゃあ、僕の使う?」
「えっ?よろしいんですか?」
「もちろん。はい、使って。」
「すみません、ありがとうございます。」
そう言って僕は祇条さんに消しゴムを手渡した。すると……。
プニッ。
(あ……。)
僕は指先だが祇条さんの手の平に触れてしまった。
祇条さんは特に反応しなかったが、僕はものすごくドキドキしてしまった。
(祇条さんの手の平に触れてしまった……。なんて柔らかいんだ……。)
僕はドギマギしながら勉強を続けた。

こうして、時間は過ぎていった。


図書室の閉館時間になり、僕たちは図書室を出た。
「それでは、相原さん。ここで失礼します。」
「うん。じゃあ、またね。祇条さん。」
祇条さんと別れ、一人家路に着く僕。
自分の手を見つめながらさっきの出来事を思い出していた。

(さっきの祇条さんの手の感触が忘れられない……。)

祇条さんの手は僕の手より、小さくて、細くて白い手だった。
僕はあの手にもう一度触れたくなった。でも、どうすればいい……?
僕は答えを求めるかの様にその手をギュッと握りしめた。


家に帰った僕は早々に夕飯を済ませて部屋で日記を開く。

4/24(月)記入日4/24 PM10:04~10:16
今日は朝早く目が覚めたので、いつもより早く登校した。
早起きは三文の徳なのか音楽室でピアノを弾いている祇条さんに会った。
それにしても祇条さんのピアノ上手かったなぁ……。
HRに遅刻して栗生さんに怒鳴られそうになったが、朝から良い気分になったのにそれを害されそうになったので逆に怒鳴り返してやった。
放課後、図書室で勉強してたら、祇条さんにまた会い一緒に勉強した。
しばらくすると、彼女の消しゴムが見当たらないと言うので貸してあげた。
その時、偶然に彼女の手の平に触れてしまった。
その瞬間、僕の中で軽い電撃のようなモノが走った。僕はまた彼女の手に触れたくなった。
そして、『あの奇妙な感覚』の正体が分かった気がする。摩央姉ちゃんの時には感じなかった感覚……。
こんなことを男の僕が言うのは変だけど、多分、初めて会った時から運命めいたものを感じていたんだと思う。

日記を書き終え、自分の気持ちに気づいた僕は嬉し恥ずかしな気持ちでいっぱいになっていた。


それから数日後。
図書室で祇条さんに会った僕はいつもより早く切り上げて彼女を一緒に帰ろうと誘った。彼女は特に戸惑うこともなく、「はい、いいですよ。」の二つ返事でOKしてくれた。

そしてその帰り道にて。
「ねぇ、祇条さん。まだ時間も少しあるし、本屋に寄って行かない?」
「本屋…ですか?」
「うん、もっと祇条さんと話したくてさ。」
「フフッ、いいですよ。」
僕たちは駅前のビルの4階にある本屋に向かった。
本屋に着いた僕たちはベンチに座った。
「それで相原さん、一体何をお話したいんですか?」
「ああ、いや、なんて言うか……。一度、祇条さんとゆっくり話したくてさ。」
「そうなんですか?いいですよ。」
こうして僕たちは世間話、受験、毎日のこと等、そんな他愛のない話をし始めた。
その内にお互いの価値観について話すようになっていった。
「相原さんは生きてく上でモットーみたいなものってありますか?」
「モットー?う~ん……大切にしてるっていうか、信念みたいなものはあるよ。」
「それはどんなものなんですか?」
「…『絶対にあきらめない』こと…かな?詳しくは話せないんだけど、昔、色々と苦労してね……。『もう、ダメだ』って事もたくさんあったんだけど、そうやって『あきらめない』ことで光が見えたことが多かったんだ。だから……。」
もちろん、それは『あの事件』からである。
あの時、辛くて全てから逃げ出したくなったけど、逃げずに立ち向かったからこそ良かったんだと思う。
「そうですか……。普段の相原さんからはそういう強い部分は見えませんけど、でも……。」
「でも?」
「時々、遠くを見る目が悲しげな目をしている時があります。」
「あ……。」
「きっと悲しい事があったんですね……。」
「………。」
「あっ、ごめんなさい!こんなこと言って……。辛いことを思い出させてしまったみたいで……。」
「いや、いいんだ、別に。傷が痛いのは事実だし……。」
「本当にごめんなさい……。」
祇条さんは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。彼女をこれ以上、困らせないために僕は話題を振った。
「それよりさ、祇条さんのモットーって何?」
「私ですか?私は……『大切な人に尽くす』ことです。やっぱり、大切な人には笑顔でいて欲しいです。」
「そっか……。良い事だと思うよ、僕は。」
「そうですか?ありがとうございます。私、嬉しいです!」
彼女の満面の笑顔に僕はまたドキドキしてしまった。
ちょっと自分の世界に浸る僕の顔を覗き込む祇条さん。
「どうしたんですか?相原さん。」
「えっ?ああ、いや、何でもないよ。それより、そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。みんなごく、当たり前に思うことだし……。」
「フフッ、そうですよね。でも、私はとても大事な事だと思って……。実はそう思うのは理由があるんです。」
「理由?」
「はい……。私、昔お母様に迷惑をかけてしまったんです。だから……。」
「そっか……。母親思いなんだね。」
祇条さんには祇条さんなりの事情があるようだが、今の話ではそれが何なのか分かりかねた。
「いえ、そんな……。」
言葉と彼女の目からは自責の念が感じられたが、祇条さんの笑顔は普段の笑顔とは違った魅力を醸し出していた。
「それに私、不安なんです……。」
「何が?」
「私、このままお母様に迷惑をかけたままで良いのかなって……。」
そう言った祇条さんからは普段の彼女からは見られない悲しい目をしていた。
僕は彼女の不安を取り除くため、そして、何より自分のために彼女の手に自分の手を重ねた。
「大丈夫だよ、祇条さん…。そんなに不安がらないで……。」
「ありがとうございます……。」
彼女は僕が手を握った事には反応しなかったが、それでも励まされて嬉しそうだった。
祇条さんの手はとても温かく、手を重ねた僕の方がドキドキしてしまった。

その後も僕たちは手を重ねたまま話した。


そして、時間はあっという間に過ぎていき、僕たちは帰る時間を迎えた。
「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか。」
「うん、そうだね。あ、遅いし近くのバス停まで送っていくよ。」
「いえ、そんなこと!……悪いです。」
「いいから、いいから。僕も、もう少し一緒に祇条さんといたいしさ。」
「そうですか?では、お願いします。」
祇条さんと少しでも長く一緒にいるために僕はエスカレーターを使わず、裏手の階段を下ることにした。一緒に歩きながら僕は考えていた。
(もう一度祇条さんの手に触れたい……。)
そして、ビルの下り階段を数段降りたところで僕は立ち止まった。
「あの、祇条さん、手…繋いでいい?」
「え……?どうしてですか?」
「えっと、その…祇条さんのことが好きだから……。」
(言った、言ってしまった……。彼女の反応は……?)
「そ、そんな……。こ、困ります、急にそんなこと言われても……。ごめんなさい……。」
(マズい、これではではフラレ損だ。)
とっさにそう思った僕は祇条さんの前に回り込み、荷物を置き、そして………ギュッ。
「えっ、えっ……!?」
ゆっくり祇条さんを抱きしめた。
一瞬、拒まれるかと思ったが、祇条さんは抵抗せず、抱き返すこともなく、無言のままその時が終わるのを待っていた。
そして、この時、僕の中では好きな女の子を抱きしめた満足感よりも別の感情に包まれていた。

心に流れ込む暖かく、彼女の体の柔らかさとは違う柔らかい感覚……。

それから30秒くらい経ったのだろうか、彼女から身を離す。
「ゴメン……。」
「いえ、そんな……。」
「……行こうか?」
「はい……。」
歩き出す前に彼女の手に触れる。
「あ……。…どうして手を握るんですか?」
「……バス停までこうしてていい?」
「もう、今回だけですよ?」
そう言った祇条さんは僕の手を握り返してくれた。
祇条さんの手は僕の手より小さく、スベスベしていて、柔らかく、そして暖かかった。

こうして僕たちは手を繋いだまま、バス停に向かった。

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