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遅ればせながら、5月25日、キミキス発売2周年記念SSです。
ぶっちゃけ、ただの思いつきで書き始めたのはここだけの話です。

さて、新たに相互リンクサイトさんが加わりました。
イラスト書きの藍原蛙一さんがやってらっしゃるキミ研というサイトさんです。
個人的な感想ですがキャラ設定をした高山先生と絵のタッチがかなり似ていると思います。
また、その先のリンク先のイラスト書きさんとやってる「キミキスR4」という企画をやってらっしゃるので是非見てみてください。オリジナルキャラたちとは一味違ったキミキス世界がみえますよ。

さて、2周年記念SS、『Memory of Summer』最後までお楽しみください。
あと、コメントは名前を入れてもらえると誰だかわかるのでよろしくお願いします。(そこまでコメント来てないけど……。)



               Memory of Summer


「輝日南~輝日南~」
駅員の何ともいえない低くて太い、独特の声が到着を告げる。
「ふぁ~あ…やっと着いたか……。」
大学の最寄り駅から輝日南まで電車で1時間程。行きも帰りもそうだが、僕にとっては格好の睡眠時間となっている。
実際、今日も輝日南に着くほんの10分前まで熟睡していた。
反射的にホームにある時計を見やる。時刻は4時ちょっと前。
「何とか約束の時間には間に合ったな……。」
電車に乗る前はそうでもなかったが、今はあらゆるものを朱に染め始めていた。。
「………。」
何となくだが、今日の夕日はいつもより赤々として、どこか、何かを感じさせる気がした。
「…っと!いけない、いけない。待ち合わせの時間に遅れちゃう。」
軽く伸びをした後、ホームの階段を昇り始める。
改札口を出ると、そこには彼女が待っていた。
「あっ、ご主人様。」
「ごめんね、深月。待たせちゃったかな?」
「いいえ、私も今来たところですから。」
「そっか。じゃあ、行こうか。」
「はい。」
二人で連れ立って歩き始めた。

あれから僕たちは無事、高校を卒業し、今年の春からそれぞれ別の大学に通っている。
二人の大学の講義の時間の関係で平日はいつも週に1日しか会えないが、その分、二人の時間は大切にしている。
二人の話はいつも「最近、学校でこんな事があった」とか、「今やってる講義の内容はこんなだ」といった、とりとめもない会話だが、お互いの学校生活や自分の知らない相手の側面が見れて、それはそれで楽しい。
そして、その内どちらからともなく、手を繋ぎ始める。最近は僕からの方が多い。
「あっ…!…フフッ、また先を越されちゃいましたね、ご主人様。」
「アハハハ、ごめんね、ちょっと強引だったかな?」
「いいえ、ちょっとイジワルしたかっただけです。」
「そっか、よかった。それで深月、今日はどこに行く?」
「そうですね…今日は久しぶりにご主人様の家に行ってみたいです。」
「ええっ!?いや、ちょっとそれは……。今、部屋散らかってるし……。」
「私は構いませんよ、ご主人様。」
彼女はにこやかに笑って僕を見つめてくる。
「………。」
僕は彼女のこの眼差しに勝てない。
彼女の性格からして脅しているということは決してないのだが、何と言うか「連れてってくださいますよね、ご主人様。」という感じなのだ。言うなれば、笑顔の圧力だ。
そして、今回も僕はその圧力の前に屈することになった。
「…ハァ。わかったよ、深月。でも、部屋に上がる前に少し片付けさせてね。」
「いえ、そんな!私も一緒に……」
「いや!本当にいいから!」
さすがにこれだけは譲れなかった。
実際、今の僕の部屋はとても人を上げられる状態ではないのは事実だった。それに女の子に見られちゃマズい物もある。
「わかりました。では、早速行きましょうか、ご主人様。」
「うん、行こうか。」

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「ただいま~。」
「お邪魔します。」
「お兄ちゃん、お帰り~!あっ、祇条先輩こんにちは~!」
「こんにちは、菜々さん。」
「菜々、悪いんだけどしばらく深月の相手をしてやってくれないか?」
「うん、いいけど……お兄ちゃんは?」
「僕はちょっと部屋の片付けしなきゃならないんだ。」
「うん、分かった。」
「それじゃあ、深月、ちょっとリビングで待っててね。」
「はい。」
深月をリビングに待たせ、階段を駆け上げる。
部屋に勢いよく入り、鞄を机の上に置く。振り返って部屋を見回す。
部屋の状態としては俗に言う『汚部屋』とまではいかないが、とにかく床には大学の講義のプリントや服やらマンガが散乱している。
「とりあえず、コイツらから片付けるか……。」
手始めに、床に散らかっている服を拾い始める。最近、遅くまでレポートを書いていたせいで、家事が疎かになっていた。
集めた洗濯物を持って、深月や菜々に気づかれないように静かに下に降り、風呂場にある洗濯機に放り込み、洗剤を入れてスイッチを押した。
「ひとまず、洗濯物は済んだな。さてと、次は……。」
部屋に戻り、散乱したプリントを科目別に分け始めた。
                   ・
                   ・
                   ・
「深月、お待たせ。」
「あ、ご主人様。」
「遅いよ~お兄ちゃん。」
「遅くなってゴメンね。片付け終わったから上がっていいよ。」
「はい。でも、随分と時間がかかってしまったんですね。」
「ハハハ…まぁ、ちょっと色々あってね。」
実はプリントの片付けが終わった後、掃除機はかけなくて済んだが、彼女に見せてはマズいアイテムを隠すのに苦労したのだ。
「とっ、とにかく、上がってよ。」
「はい。」
「菜々、深月の相手ありがとな。」
「うん!」
彼女を先に部屋に上がらせた僕は冷蔵庫から飲み物を取り出し、部屋に向かった。
「お邪魔します。」
「はい、どうぞ。」
飲み物を机の上に置き、部屋の隅から小さい折りたたみ式のテーブルとクッションを二つ出して彼女を座らせた。
僕はジュースをコップに注ぎながら、彼女に話しかけた。
「ごめんね、時間かかちゃって。」
「いいえ。それより、ご主人様の部屋に来るのって本当に久しぶりですね。」
「ああ、そういえばそうだね。最後に来たのは確か、去年の夏休みだっけ?」
「はい、確かあの時は勉強会ってことで来たんでしたよね。」
「うん、そうだったね。」
「はい、その時以来ですから本当に久しぶりです。」
「そうだね。ああ、そういえばあの時は……。」

そんな他愛もない思い出話を始めた。


しばらくそんな話が続き、話が切れたところで僕は時計を見た。
時刻は4時45分。外の景色はもうすっかり真っ赤になっている。
気がつくと、僕はその景色と夕日を眺めていた。
「………。」
やはり、今日の夕日はどこか、何か感じさせるものがある。何故だか分からないがそんな風に思えた。
「どうしたんですか?ご主人様。」
「ああ、いや、電車から降りたときも思ったんだけど、今日の夕日はいつもより綺麗だなって思ってさ。」
「ふふっ、そうですね。」
「それに…何だか懐かしくてさ。」
「どうして…ですか?」
「何て言うか……深月と…祇条さんと出会った頃を思い出してさ。」
「あ…。」

そう、あれからもうすぐ2年も経つのだ。
今は僕たちも大学生だが二人が出会ったのはまだ高校2年生の夏の頃だった。
彼女との出会いは朝、彼女が音楽室でピアノを弾いているところに出くわした所から始まる。
それから何となく話すようになり、彼女の勘違いから僕が彼女の婚約者ということになってしまった。
最初はあまりの急展開に戸惑ってしまったが、彼女と過ごす内に僕も彼女を意識するようになっていった。
そして、二人で初めてデートしたあの日、僕は彼女から告白された。
しかし、所詮は勘違いから始まった恋。
その誤解に気づいた時には二人とも大きなショックを受けた。
その勘違いに気づいた彼女からの電話は今もはっきり覚えている。

「……祇条家の娘は、生まれた時から、どこに出しても恥ずかしくない教育を受けて…より誉れ高い家の跡継ぎと結婚するのが習わしなんです。でも…でも…!私…取り返しのつかないことを……。私、あなたを好きになってしまいました。」

「私のご主人様は一人だけです。私はその方と共に生きていきます。たとえ…何があっても……。でも…私にとって、この一ヶ月は夢のような時でした。一生分の幸せをあなたからもらったんだと思います。」

その時の彼女の声はあまりに悲痛で切ない声だったし、僕の方も頭の中がグチャグチャだった。
実際、それから学園祭までの十日あまりは二人にとってあまりに辛く、切ない日々だった。
だが、学園祭の後、僕たちの出した答えは………。
                   ・
                   ・
                   ・

彼女はどこか懐かしそうな表情でポツリと喋り出した。
「……そうですね、月日が経つのはあっという間ですね。」
「うん、本当にあの頃が懐かしいよ。何てたって、深月が僕を婚約者と間違えるんだから。あの時は本当に驚いたよ。」
「フフッ、そんなこともありましたね。……でも、そんなことも今となっては良い思い出ですよね。」
「うん、そうだね。それに……」
「?」
「こうして、大切な人と巡り会うこともできた。」
「ご主人様……。」
彼女は嬉しそうに微笑み、そっと頭を僕の肩に預け、寄り添ってきた。

確かに、彼女との出会いはほんの些細なもので偶然なのかもしれない。
でも、そこから二人で築き上げてきたものは勘違いでも、幻でもない。
二人にとって、どれ一つ欠くことのできない、大切な思い出なのだから。
これから先の未来は、今年の夏は僕たちにどんな出来事と出会わせてくれるのだろう。



今年ももうすぐ夏が来る――――――――――――


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