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第三話です。

第四話はまだ下書き状態なので次の更新は少し先になりそうです。出来れば3月中に。

                 第三話 自分から思い切って


「あ、おはようございます。有森さん。」
「ああ、森崎君。おはよう。」
校門の所で偶然会ったので何気なく挨拶を交わす。
数日前、有森さんと商店街で会ってから僕たちは今朝のように校門や廊下で会ったら挨拶を交わすようになった。
だが、この間のように二人でゆっくり話すようなことはなく、僕たちの仲が進展したとはあまり言える状況ではなかった。
そんな感じの生活が数日続いた。だが、事件はある日突然起こった。

ミ~ンミ~ンミンミンミ~ン ミ~ンミ~ンミンミンミ~ン
その日はいつもよりも暑く、風もない日だった。
当然、授業など聞いていられず、休み時間になるとすぐどこかに涼みに行っていた。
3時間目が終わり、いよいよ日差しも強くなってきたので僕はプールに涼みに行くことにした。
この時間だと、どこかのクラスが授業で使ってるハズだからプールサイドまでは行けないが、それでも水が近くにある場所は幾分か涼しいはずだ。
プールの近くにある部室棟の近くまで行くと何だかプールの辺りの様子が変だった。
(ん?何だか騒がしいな……。)
普段と様子が違うことを怪訝に思っていると、プールの方からカメラを持った男子生徒がこちらに走って来た。
「おっ!何だ、森崎か。」
「誠太郎、どうしたんだ?そんなに慌てて。」
「今は説明してる時間はない!後は頼んだっ!さらばだ!」
そう言って誠太郎は全速力で走って行った。
「一体何のことだよっ!?」
ワケが分からないとはこのことだと思っていると、今度はスクール水着姿の女子が走って来た。
「こらっ!待ちなさいっ!」
その子が近づいてくるにつれて、その水着姿の女子が誰だか分かった。
「っ!?あ、有森さん!?」
「あ、森崎君。今こっちに誰か来なかった?」
軽く息を弾ませている有森さん。どうやら、プールから直接走って来たらしく、髪も濡れたままだし、水着姿のまま靴を履いている。
おまけに水着なので身体のラインがはっきりしているせいで色っぽいというか妙にエロい。健全な男の子には眼福というか、目に毒である。
「え?…ええ、来ましたけど、もう行っちゃいましたよ。」
「あーもうっ、逃げられたー!」
何時になくエキサイトしてる有森さん。珍しいというか何かあったのだろうか?
そう思い訊いてみると、さっきの誠太郎の言動に合点がいったというか、頭の片隅で予想していた答えが返ってきた。
「それがね…プールを隠し撮りされたの。」
「ええっ!隠し撮り?」
「多分…写真部の男子だと思うんだけど……。もーっ、今度見つけたらとっちめてやるんだからっ!!」
「………。」
悔しそうに顔をしかめる有森さん。
(誠太郎のヤツめ、なんて羨ましいこ……いやいや、なんてコトしてんだ!っていうか、この間僕が言った側から捕まりそうになってるじゃないか!)
「ね、逃げた男子の顔を見なかった?」
一縷の望みに縋るかの様にグッと顔を近づけてくる。お願いですから、その格好でそんなに顔を近づけないでください……。
「えっ!?えーっと…残念ながら……。」
有森さんのために教えてあげたかったが、さすがに犯人が誠太郎と分かった以上友達を無下に売ることも出来なかった。
「そう……。」
「あ、有森さん、その……」
「何?」
そろそろ気づいて欲しいというか、色んな意味で限界を迎えそうだった。
「あの…さっきから、目のやり場に…ちょっと困ってるんですけど……。」
「えっ?」
そう言われた有森さんは一瞬キョトンとし、自分の格好を見て顔をカッと赤らめた。
「あっ!!や、やだっ、私ったら……。」
慌てて胸の辺りで腕を組み体を隠すような仕草をする有森さん。
この場においては不謹慎だと思うが、その仕草と表情がめちゃくちゃカワイかった。
「ま、またね、森崎君。」
有森さんはそのまま恥ずかしそうにプールに戻って行った。
(誠太郎のヤツ……。後で写真を焼き増ししてもらわないとな。)

後日、誠太郎からは口止め料として有森さんの写真をバッチリと貰った後、有森さんの代わりに軽く締めた。たまには反省しろ、このスケベ野郎め。
堂々と有森さんの水着姿が見れ、写真まで貰った僕が一番特をしたと思うが、普段ルリ姉や誠太郎に振り回されている不憫な毎日を考えれば、たまには、こういうのも良いだろう。


そんな感じで思わぬハプニングがあったりしたものの、やっぱり有森さんとは直接話す機会はなかった。
やはり他のクラス、それも上級生となるとなかなか話す機会も少なく、ワンチャンスをモノにしなければならない。
それに今までは結構ラッキーだったというか、運任せ感が強かった。これでは仲良くなるのも永遠にムリというか、相当時間がかかる。
そう思った僕は有森さんともっと仲良くなるべく、思い切って自分から行動に出てみることにした。
それからの毎晩の夕食でのルリ姉との会話は戦いだった。
どうにかして、ルリ姉から有森さんのとある情報を『自然』に聞き出そうと必死だった。
お陰でルリ姉からは「アンタ、最近どうしたの?何か目が怖いんだけど。」と僕が変な方向に進んでるんじゃないかと疑われたがこの際どうでもいい。
しかも案外すぐに聞き出せるかと思ったが、有森さんが主体の話題というのが意外に少なく持久戦を余儀なくされた。
そんな緊張感溢れる夕食が続くこと5日目。ついにその時は来た。
「…でね、瞳美ったらさぁ~」
「ヘぇ、有森さんがねぇ……。ところでルリ姉と有森さんってよく一緒に帰るの?」
「それがさぁ~実は案外そうでもないのよ。土日は私が部活がない日によく遊ぶんだけど、学校のある日は私は部活だし、瞳美は瞳美ですぐ帰ったり、図書室で勉強してるし……。この間アンタと三人で帰った時なんか珍しいもんよ。」
「そうなんだ。じゃあ、有森さんって結構忙しいんだね。」
「そう思うでしょ?実は結構、瞳美の気まぐれなのよ。バイオリンのレッスンは週に1回だし、それ以外は実は何にも予定ないから、その日どうするかはあの子の気分次第なのよ。」
「へぇ~。意外だなぁ……。」
「そうでしょ、でねでね……」
                 ・
                 ・
                 ・
食事の片付けを終え、部屋に戻った僕は一人でほくそ笑んでいた。
そう、僕がルリ姉から聞きたかったのは普段、有森さんが放課後どこで何をしてるかということ。
ハッキリ言ってストーカー行為だが、これにはある目的があった。
それは僕には有森さんと一緒に帰るということ。
有森さんと普段の学校生活で接する機会がないのなら、いっそのこと「一緒に帰ろう」と誘って堂々と話そう考えたのだ。
以前、誠太郎から聞いた話ではファンクラブとか、親衛隊みたいなのは存在しない様だし、正面から攻めても問題ないだろう。
有森さんの生活パターンを勝手に調べたのは正直後ろめたいものがあったが、別にこれを何かに悪用しようとかいうワケでもないし、世の中の男も女の子と仲良くなるためにこれくらいしてると思う。いや、思いたい。
一しきり作戦(妄想とも言うが)を練り、部屋にある時計をふと見ると時間は11時を指そうとしていた。
「よしっ、明日に備えて今日はもう寝るか。」
明日、有森さんと一緒に帰れることを期待してワクワクしながらベッドに入った。

++++++++++++++++++++++++++++++++++

翌日の放課後、僕は鞄を持って昇降口の辺りをウロウロとしていた。
昨日のルリ姉との会話で今日はバイオリンの練習日ではないのはリサーチ済みだし、その日の予定が不規則なら下駄箱で待っていた方が早い。

今か今かと考えながら待つこと15分。
あの艶のある黒のセミロングのシルエットが下駄箱に現れた。
その姿を見て反射的に身を隠してしまった。すぐに話しかけたら何だか狙っていたみたいな気がしてならなかった。
いよいよ有森さんを誘う時が来たと思うと何だか心臓がバクバクしてきた。お、落ち着け僕。
有森さんが下駄箱を出た。僕も二、三度深呼吸をして下駄箱から飛び出した。
「あ、有森さん!」
「あら、森崎君。今帰り?」
「あ、えっと…はい。有森さんもですか?」
「ええ、そうよ。」
「それじゃあ…い、一緒に帰りませんか?」
「えっ?一緒に?」
有森さんがちょっと驚いたように目を丸くする。
「はい…ダメでしょうか?」
「う~ん…そうねぇ……。」
少し考え込む有森さん。緊張が最大限に高まってきた。ヤバい、胸が苦しい。
「ええ、いいわよ。一緒に帰りましょ。」
ニコッと笑う有森さん。その笑顔とOKの返事で思わずガッツポーズをとりそうになってしまったが何とか抑えた。
「えっと…じゃあ、行きましょうか。」
「ええ。」
有森さんの了承が得られたことを得て、並んで歩き出す。
目標を達成できたことの高揚感と有森さんと帰れるという緊張感でテンションがおかしくなりそうだった。
また自分を落ち着けようと、有森さんに気づかれないように深呼吸する。
そんな僕に気づかず、有森さんはニコニコしながら話しかけてきた。
「でも、まさかるりちゃんの弟さんと帰るとは思わなかったわ。」
「そっ、そうですか?」
「ええ、夢にも思わなかったから。」
「………。」
それは僕も有森さんと同様だった。少し前までは女の子と話す機会もそうなかったのだから……。
「あ、有森さん。」
「ん?何?」
小首を傾げてこちらを見上げてくる。
「今日、学校でどんなことありました?」
「そうねぇ…今日もいつもと変わらない1日って感じかしら。」
「そうですか。有森さんって普段どんな学校生活なんですか?」
「そんなに森崎君と変わらないと思うわよ。あ、でも、るりちゃんがいるから毎日退屈しないわね。」
楽しそうにクスッと笑う。あの姉の性格からして一体普段何をしでかしているのかと思うとものスゴく不安になる。
「…それってどういう事なんですか?」
「例えばね……」
そんな感じで有森さん話で盛り上がった。
お陰で普段の有森さんの様子とか趣味、あとウチの姉の愚行など色々聞けて楽しかった。

楽しい時間というのはあっという間で気がつけば、もうすぐ僕たちが別れる道の近くまで来ていた。
「もう着いちゃったわね。何だかあっという間だったわ。」
「そうですね……。」
(せっかくいい感じに盛り上がってるのに、このまま別れるのもなぁ……。…そうだ!)
「あの、有森さん。もし、よかったら少し寄り道しませんか?」
「え?寄り道?…うん、いいわよ。」
「本当ですか?やった!」
「どこへ行く?」
「そうですね…神社なんて、どうです?」
「いいわね、静かで落ち着けそう。」
嬉しそうにニッコリと笑う有森さん。場所の選択も良かったみたいだ。
「よしっ、じゃあ行きましょう!」


神社に着いた頃にはもう日も暮れ始め、空もオレンジ色に染まり出していた。
ちょっと薄暗くなってきた神社の境内。どこからかひぐらしの鳴き声も聞こえる。
「夏ね、蝉が鳴いてるわ。」
「そうですね。」
「神社の雰囲気って何となくいいわね。子供の頃、よく遊んだわ。」
「そうなんですか?」
「ええ。境内を散歩するのも好きだったの。」
「ヘぇー。」
「アリさんの行列を飽きもせずに一日見つめたこともあったかな。」
「そういうのが楽しい時期ってありますよね。」
「ふふっ、そうね。」
そう言って有森さんは懐かしそうに夕暮れの神社を見回した。
ちょうど心地よい柔らかな風が吹いてきた。それに合わせて髪を書き上げる有森さん。
その景色と仕草が何というかめちゃくちゃ絵になる感じでドキドキした。
一しきり風景に満足したのか有森さんはこちらに向き直ってきた。
「…さ、そろそろ帰りましょうか。」
「そうですね、あんまり遅くなるのもまずいですしね。」
「そうね。今日は楽しかったわ。また誘って。」
「えっ、あっ…はい!」
ニコッと笑う有森さん。その笑顔にまたドキドキしてしまった。

こうして僕の有森さんと一緒に帰るという計画は大成功に終わったのだった。

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