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2008.03.07 chapter2
第二話です。
キミキスでお色気担当のあの方が登場します
追記:chapter1と同様に修正しました(3/10)


食後、お腹いっぱいになった満足感に浸っていた僕になるみちゃんのおじいちゃんが突然声をかけてきた。
「光一君、明日って何か予定あるか?」
「いや、明日は勉強するだけなんで特にないですけど。どうしてですか?」
「うむ…。実はな、これからお風呂に行くつもりなんやけど、君も一緒にどうかと思っての。」
「えっ?」
「あっ、それいいですね!先輩、是非行きましょう!」
「でも、着替えもタオルも持ってないし……。」
「そんな物はウチから借りてけばええ。」
「えっ、でも、そんな……。」
「いいじゃないですか、先輩も行きましょうよ~。」
「ワシからも頼むわ、光一君。」
「………。」
なるみちゃんのおじいちゃんがそこまで言うとは思わなかった。
だが、なるみちゃんのおじいちゃんからこうまで言われて断る訳にはいかない。
「……分かりました、行きましょう。」
「やった~~!先輩、だ~い好き!」
そう言ったなるみちゃんは思いっきり僕の胸に突っ込んできた。
「ど~ん!」
「グフッ!……な、なるみちゃん、痛いよ。それにおじいさんの前で……。」
僕は照れながらおじいちゃんの顔をチラッと見た。
僕は最初、おじいちゃんは絶対面白くない顔をする顔をしているだろうなと思った。
だが、おじいちゃんはさっきの食事の時と同じように、そんな彼女に対して微笑ましいという感じとどこか悲しそうな表情を浮かべていた。
(……?)
僕はそんなおじいちゃんの表情に疑問を感じた。
おじいちゃんは僕の視線に気づき、それを振り払うようになるみちゃんに声をかけた。
「なるみ、光一君にタオル出してやってくれ。」
「うん!」
なるみちゃんの姿は元気よく家の奥に消えて行った。
毎度のことだが、一緒に行けるとか居れるだけなのにルンルンしている。まぁ、そこが彼女の良い所なのだが。
残された僕はさっきの事で何となく居心地が悪くなって、おじいちゃんを見た。
おじいちゃんは何も言わず黙っていた。僕としては不気味だった。
そんな気まずさを紛らわす手段を考えていると、とある方法を思いついた。
「あ、あの、おじいさん。」
「何や?」
「一応、時間が時間なんで家には連絡しますね。」
「おお、そうやな。電話しとき。」
「はい。」
僕は制服のポケットから携帯を取り出し、家にかけた。
「……あ、もしもし。菜々か?」
「うん、そうだけど。お兄ちゃん、今どこに居るの?」
「ああ、なるみちゃんの家でご飯食べてたんだけど、おじいちゃんからお風呂に誘われて、これから商店街の銭湯に行ってくる。」
「ええ~!ご飯、お兄ちゃんの分まで作ったのに~!うぅ…お兄ちゃんのバカ~!!」
「わ、悪い、菜々。明日の朝、ちゃんと食べ……。」
「菜々も行く……。」
「は?」
「菜々もお兄ちゃんとなるちゃんとお風呂行く!」
「え?ちょっと菜々!おい!」

ガチャン

菜々は一方的に電話を切った。これはあきらめるしかなさそうだ。
おじいちゃんはそんな僕らのやり取りを察してか、話しかけてきた。
「どうした?光一君。」
「どうも妹まで来るみたいです……。」
「そうか。賑やかになりそうやなぁ。」
「すみません……。」
(まったく、菜々のヤツ……。帰ったら、こってり搾ってやる。)


輝日南の商店街の奥には昔から続いている銭湯、『輝日南湯』がある。
僕も家のお風呂が壊れた時とかにたまに使ったことがあるがそれぐらいで、ここ数年は行ってない。
なるみちゃんの家からだと5分程の距離で、この時間だと閉店時間の早いお店の人が来るぐらいだとか。
僕たちは三人でその銭湯に向かって歩いていた。
なるみちゃんはおじいちゃんがいるにも関わらず、僕の腕にくっついている。
僕はまた気恥ずかしくなり、なるみちゃんのおじいちゃんの顔を見た。
なるみちゃんのおじいちゃんはさっきと同じ表情を浮かべて僕らを見ていた。
僕は昼間といい、さっきといい、そんなおじいちゃんの表情が疑問に思えて仕方がなかった。
なるみちゃんのおじいちゃんとは2年の時になるみちゃんに連れて来られた時に会ったきりだったが、少なくともその時は、ただ、孫の可愛らしさに微笑んでいた様に感じられた。
だが、今はどこか何かを心配してる様に思えた。
「………。」
「どうしたんですか?先輩。」
「あっ、いや、何でもないよ。ちょっと考え事してただけだよ。」
「もぅ、私といる時は私だけを見ててください!」
「ハハハ、ごめん、ごめん。」

そんな事をやってる内に『輝日南湯』に着いた。
入り口には菜々ともう一人、意外な人物が立っていた。
「摩央姉ちゃん!?」
「あ、光一になるみちゃん、それになるみちゃんのおじいさん。待ってたわよ~!」
「どうしたの?こんな所に。」
「ウチのお風呂が壊れちゃったのよ~。それでしょうがないからココに来たってワケ。菜々ちゃんとは来る途中で会ったの。」
「そっか、それで二人で待っててくれたんだ。」
「ええ。」
そんなやり取りを少し交わし、会話が途切れたところでなるみちゃんのおじいちゃんは僕に話しかけてきた。
「それじゃ、光一君、入ろうかの。」
「ああ、はい。そうですね。」
「先輩、後で。」
「うん、後でね。」
僕は男湯の脱衣所に入って行った。
お客の数は話の通り、ほとんどいない。オジさんばかりだ。
なるみちゃんのおじいちゃんは、知り合いの人と少し話すから先に入ってくれということだから、僕はさっさと制服を脱ぎ、大浴場に入って行った。
大浴場の中は誰もいない。どうやら貸し切り状態のようだ。
(こんなチャンスは滅多にないぞ……。早く体を洗ってお湯に入ろう!)
僕は急いで体を洗い、湯船に浸かった。
銭湯だけあって、家の風呂より少し熱い。だが、キツいのは最初だけで慣れると何てことない。
(ふぅ~~。やっぱ風呂は良いよなぁ……。一日の疲れが吹っ飛びそうだ。)
そんな少し年寄り臭いことを思ってると隣の女湯からキャッ、キャッと黄色い声がした。
「わ~い!お風呂が貸し切りだ~!早く入ろ、なるちゃん!」
「うん!私もおじいちゃんとよく来るけど、誰もいないなんて滅多ないよ!」
ザバーン!という大きな音を響いた。どうやら飛び込むような勢いで入ったようだ。
(やれやれ……。あの二人は……。)
二人の元気さに若干呆れながら、僕は笑ってしまった。
そんな僕をよそに、第三の声が聞こえた。
「わぁ~。銭湯なんて久しぶりね~。どれどれ…うん!丁度いい湯加減。あ~極楽、極楽~。」
(摩央姉ちゃん、おっさんかよ……。)
摩央姉ちゃんに心の中で突っ込みを入れる。だが、ここから摩央姉ちゃんの暴走が始まった。
「……さ~て、そろそろカワイイ後輩たちの成長ぶりを確認しなきゃねぇ~。」
「え?」
「え?」
(え?ま、まさか……!)
「そぉれ!」
ザバッという音がしたかと思えば、次の瞬間、軽い悲鳴が上がった。
「キャッ!ちょ、ちょっと摩央姉ちゃん!変な所触らないでよ~!」
「んん~~ちょっとだけど菜々ちゃんも育ってるわね~。なるみちゃんはどうかな?ホリャ!」
またお湯の音と共に悲鳴が上がった。
「ヒャッ!水澤先輩のエッチ~!」
「ンッフフ~良いではないか、良いではないか~。なるみちゃんは菜々ちゃんよりは順調に育ってるわねぇ~。ま、まだまだだけどね。」
「うぅ…摩央姉ちゃんヒドいよ~!…なるちゃん!」
「うん!」
「え?」
「キャッ!ふ、ふたりともやめてよ~!ちょ、やっ…」
「摩央姉ちゃんの胸、大っきいから触り応えあるよね~。ね~なるちゃん!」
「ね~菜々ちゃん!」
「………。」
湯船の中に顔の半分まで浸かってた僕はその声を聞きながら有らん限りの想像力を持ってその状況を妄想していた。
(や、やはり…あの声は…ということだよな……。……って考えてんだ、僕は!いつなるみちゃんのおじいちゃんが入ってくるか分からないっていうのに!)
とりあえず、一部始終、聞いていたとは思われたくないので静かに湯船から出て大きめな音で男湯の引き戸を開けた。
「さ~て、お風呂、お風呂~!」
向こうは案の定、慌てて話を止めて、こちらに声をかけてきた。
「こ、光一!いつからそこに?」
「え?たった今だよ。摩央姉ちゃんこそどうしたの?」
「う、ううん!何でもないのよ。オホホホ……。」
「せ、せんぱ~い!そっちはどうですかぁ~?」
「え?ああ、まだ誰もいないよ。なるみちゃんのおじいちゃんもまだ入ってないし。」
「そ、そうですか~。」
「……二人ともそろそろ上がりましょうか。」
「う、うん。じゃあ、外で待ってるからね、お兄ちゃん。」
「ああ。」
ザバザバという音と共に三人は女湯から出て行った。

……我ながら白々しい芝居だと思ったが、この際、細かい事は抜きにすることにした。
そんな事を考えているとなるみちゃんのおじいちゃんがようやく入ってきた。
「遅くなってスマンな、光一君。ちょっと話し込んでしまっての。」
「いえ、僕はゆっくり入ってる人間なんで、気にしないでください。」
長いこと浸かっていた僕は体を冷ますために浴槽の淵に腰を下ろし、なるみちゃんのおじいちゃんは僕を気遣ってか、急いで体を洗い始めた。

それから5分後。なるみちゃんのおじいちゃんはゆっくりと湯船に浸かり始めた。
僕もそれに合わせて湯船に浸かり直した。
なるみちゃんのおじいちゃんは最初は風呂の湯の温かさにリラックスして目を閉じていたが、その内、一瞬だけ目を開けて今度は何かを考え込むような表情になった。
その雰囲気から僕に何か言いたいことがあるのだろうと感じ、僕もそこから動かなかった。
「……光一君。」
「はい…。」
「いつもなるみを可愛がってくれてありがとの。」
「いえ、そんな……。僕の方こそさっきはすみませんでした。」
「そんな事は気にせんでええ。なるみが強引に甘えとるんやから。いつもそうなんやろ?」
「ありがとうございます……。」
「君は今、高3やったな?ということは受験生か……。」
「ええ、まぁ……。」
「なるみのことはどう思っとる?」
「そうですね……元気一杯でとても明るい子だと思います。一生懸命になれる事も、僕に追いつこうと頑張る所もいじらしくて僕は良いと思ってます。」
「あの娘の進路のことは?」
「里なかを継ぐってことでしたよね。僕は別に悪い事じゃないと思いますけど……。」
「ワシが大学に行けということで引っかかっとる?」
「ええ……。」
「ワシも同じや。」
「え?」
「あの子が店を継ぎたいというのは素直に嬉しい。だがの、あの子にはワシ以外に身寄りがないんや……。」
「え……?」
「あの子の父親はワシのせがれで店で修行してての。その頃はまだ輝日南も今ほど栄えてなかったんやが、店はその分、大繁盛やった……。」
「………。」
「その内、せがれは学生時代の娘と結婚して、二人の間に女の子が生まれた。それがなるみや。だがの……。」
そう言ったおじいちゃんは急に暗くなり、その雰囲気から僕は察した。
「…亡くなったんですか?」
なるみちゃんのおじいちゃんは何も言わず、うんと頷いた。
僕はその意味を愕然としながら受け止めた。
「ワシの女房もあの子が小さい内に死んでな……。ワシ一人であの子を育ててきたんや。」
「そうだったんですか……。…なるみちゃんはその事を知ってるんですか?」
「うん、あの子が小学校5年の時に話してある。その時はしばらく学校にも行けなくての……。」
そりゃ、そうだろう。僕だってそんな事を聞かされたらショックを受ける。
「だからこそ、心配なんや。今はワシもまだ働けるが、この年になれば、いつ迎えが来るか分からん。そうなった時にあの子がどうなるか……。だから、せめて店を継ぐのは大学を出てからにして欲しいんや……。」

なるみちゃんのおじいちゃんの心配はもっともだ。
今のご時世、学歴だけが全てではないが、その占める重要性は今も大きい。
それにこの先、この商店街もどうなるか分からない。ここ十年の開発で輝日南も大きく変わったと言うし、必ずしもこの先、里なかが店をやってけるかという保証はない。
なるみちゃんのおじいちゃんは静かに続けた。
「……だがの、さっきも言ったようにあの子の気持ちも尊重してやりたい。君も分かっとるとは思うが、あの子は上達のためには努力を惜しまん。だからこそ、難しいんや……。」
それっきり、なるみちゃんのおじいちゃんは黙りこくってしまった。
僕も正直、驚きを隠せなかった。なるみちゃんにそんな秘密があるとは夢にも思わなかった。
なるみちゃんのおじいちゃんはそんな空気を振り払うかのようにザバッと浴槽から上がった。
「さ、湿っぽい話はこれで終いや。悪かったの、年寄りのムダ話に付き合わせて。」
「いえ……。」
長い間お湯に浸かっていた僕の体はのぼせる寸前くらいまで熱くなっていた。

脱衣所に戻った僕は体を拭き、服を着替えてるとなるみちゃんのおじいちゃんはある物を渡してきた。
「光一君、これ飲み。あと、これも。」
渡されたのはビンのコーヒー牛乳と茶封筒。
「ありがとうございます。でも、この封筒は…?」
「いいから、開けてみ。」
言われた通り封筒を開けると、中には福沢諭吉が二人いた。
僕は驚いて、おじいちゃんを見やるとおじいちゃんはニカッと笑った。
「今日のアルバイト代や。受験生やし、何かと物入りやろ。」
「そんな…こんなの受け取れませんよ!僕、こんなつもりで手伝ったんじゃありません!」
「分かっとる。だからこそ、用意したんや。それに、可愛い孫が世話になっとるし、これはそういう意味も入っとるんや。だから受け取ってくれ。」
なるみちゃんのおじいちゃんは笑いながらも目は真剣そのものだった。
そんなおじいちゃんに押されながら僕は封筒を受け取った。
「…ありがとうございます。」
(このお金は当分使いたくないな……。)

男湯を出ると待合室のマッサージチェアに摩央姉ちゃんが、その近くの椅子に菜々となるみちゃんがいた。
「あぁ~~やっぱ効く~!」
「摩央姉ちゃん…オジン臭いよ……。」
「あ、光一。いいじゃない、別に。男の子には分からないわよ、胸で肩が凝るなんて。結構重いのよ?」
そう言った摩央姉ちゃんは胸を抱えて持ち上げてみせた。
「ちょ、摩央姉ちゃん!はしたないよ!」
「フフッ、ムキになっちゃってカワイイ~!」
「あのねぇ……。」
「冗談よ、光一。こんなことアンタぐらいにしかしないわよ。」
「………。」
「この人はこの人で……。」と呆れたが、それも流すことにした。
「さ、帰ろう。菜々、なるみちゃん、帰るぞ。」
「あ、うん!」
「は~い、先輩。」
合流した僕らは一緒に輝日南湯を出た。
「それじゃ、光一君。今日は来てくれてありがとの。」
「いえ、また時間がある時に来ますね。」
「うん、また来てくれや。なるみ、ワシは少し先に帰るからすぐに追いつきや。」
「え?おじいちゃん?」
摩央姉ちゃんも雰囲気を察してか僕に声をかけた。
「あぁ~…光一、私と菜々ちゃんも先に帰るから。アンタもすぐに追いつくように。行こ、菜々ちゃん。」
「うぅ……。」
菜々は少し恨めしそうな顔をしながら摩央姉ちゃんに引きずられて行った。
残された僕らは周りの気遣いに恥ずかしくなりながらも話すことにした。
「先輩、今日は来てくれてありがとうございました。」
「ううん、僕も息抜き出来たし楽しかったよ。」
「本当ですか!?よかった~。あ、そういえば先輩、お風呂長かったですけど、おじいちゃん、私のこと何か言ってました?」
その言葉に度肝を抜かれた。今、まさに考えてた事だ。
だが、なるみちゃんの秘密をここで言うわけにもいかず、スルーすることにした。
「そ、そんなことないよ。ただ、いつもなるみちゃんと仲良くしてくれてありがとうって言ってたぐらいだよ。それ以外は特に……。」
「そうなんですか?」
「うん、そうだよ。さ、もう遅いし、そろそろ帰らないと……。」
「じゃあ、先輩…んっ!」
なるみちゃんは目を閉じて、顔を僕に突き出してきた。
「………。」
なるみちゃんの気持ちは嬉しいが、今は何となくそんな気分じゃない。とはいえ、やはり僕にとっては大切な存在だ。
僕はなるみちゃんの頬に手を置いた。
「あ……。」
なるみちゃんはピクンと反応する。そして……。
「……どうしてほっぺなんですか?唇が良かったのにぃ……。」
「……今日はこれで我慢して。今度ちゃんとしてあげるからさ。」
「うぅ…先輩のイジワル~。」
「フフッ、それじゃあね、なるみちゃん。」
「はい、また学校で。」

僕らはそこで別れ、それぞれ家路に向かって歩き出した。

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